SSブログ

シュリンクする日本、世界(読書)

シュリンク(=縮んでいく)する日本と世界


1)内田樹・高橋源一郎「沈む日本を愛せますか?」文春文庫 ¥710+税 2014年5月刊


2)水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」集英社新書 ¥740+税 2014年3月刊


 タイトルを見ただけでも、あまり明るい未来図を思い浮かべることができないでしょうけれど、悲観的に未来を捉えるのではなくて、そのような事態を想定しておけば、個人としては今後の生活設計を、国・自治体としては用意周到な長期的対策を講じることができるはずです。


 1)は、書名の内容を論じているのは後半の30ページ分で、その前の大半は政権交代すなわち、民主党の鳩山政権が成立したあたりからの政治批評ということになります。今の時点から見ても、自民が過半数を超える両院議席を得て、集団的自衛権実現に向かっているのを止める政治勢力がいないことになってしまったわけだけれど、これで終わりではないです。また政権の交代だってありえるわけです。
 民主党が敗退したのは、前の戦争での敗戦以来、政治と経済の重要問題は、実は背後にいるアメリカが主導しており、今もそのままだという認識が甘かったのだと説明される。
 人口問題一つにしても少子高齢化と人口減少がずっと続いて、3,40年後には9千万人くらいにまで下がります。この流れを止めようとかすると別の問題が生じるので、無理をしない方がいいのです。経済成長はもうあり得ないという前提で国家像ビジョンを提示している政党や政治家がいない。(はっきり言っているのは、この2冊の本などでしょう)
右肩上がりだけしか経験していない国と政治家は、縮んでいくダウンサイジングの時代を語る言葉さえ持っていない。
 それはともかく、内田氏らは政治もコロッキャル(口語体)な言葉で説明されるべきだという考えを持って実践されておられるので、氏の著書はとても読みやすいです。


 2)は世界経済の資本主義変遷の歴史と、現在のグローバリズム経済を比較した上での資本主義の未来予測の本であって、資本が周辺から中央へ蒐集・収奪する、その「周辺」が次第に無くなって行った時が資本主義の終焉だと言い切り、その後はどんな経済体制になるのかはわからないとしています。しかし、定常社会というのは、日本では長い江戸時代の経験があるので、そのような変化のない世の中に変わるのかもしれません。「経済成長」の言葉で今後の政策を立てるのは傷を深くし、手当が遅れてしまうと、アベノミクスを批判しています。もはや成長の余地はなく、中国やインドなどがあと20年くらいは持続できても、その後を誰も予測できません。マーケットが存在しないからです。日本でも10年物国債の金利が2%のままで、この金利では投下した資本は増加しません。金融緩和しても企業は設備投資に向かわず、余剰資本が投機の機会をうかがっている外国資本は、より金利の高い国へ向かいます。
 TPPなどは、アメリカの収奪する「周辺」を広げようとする狙いだけであって、先進国が後進国をマーケットにしてしまい、「強い者はより強く、弱い者(後進国)は更に落とされます。市場を広げることのできない企業が最後の手段として、人件費の削減に手を加えてから非正規雇用が増大し、このために年収200万円程度の若者があふれているばかりか、残業を支払わない制度まで作ろうとしている流れです。「一億総中流」からアッという間に「格差社会」になってしまいました。国までが介護に外国人雇用を想定し始めました。

 資本主義というのは、無限の資源と自由にできる労働者によって生産、それを購入する消費者層の存在が必須でした。これは過去の法則で、資源もエネルギーも無限ではなくなりつつあるので、終焉はやがてやってくると、著者の警告です。これまで経験したことのない新しい経済体制へソフトランディングする政策が望まれます。個々人は自衛と助け合いの、つつましいシンプルな暮らしを今から用意しておくことだと思います。ちょっと理解できない経済用語もありますが、とにかくここでは説明しきれないほどの説明がこの本にあります。

 この2冊を読んで、私は今のうちから、生活をシュリンクし始めるのがいいかもしれないと思いました。うまい話をスローガンにする政治家企業家を信じない。実はこういう時代がやってくるので、助け合ってシンプルに暮らしていこうと決意を強くしました。有機農業の実践という形ですでに始めてはいますけれどね。


nice!(2)  コメント(1)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 1

とりのさとZ

7月6日の東京新聞(中日新聞)の社説で、上の水野和夫氏の著書(2)が紹介され、解説されています。  下にあります。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014070602000125.html

by とりのさとZ (2014-07-06 12:17) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。