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人口減社会シリーズ5 夕張市など

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 人口減が進む、全国のいくつかの地域のルポです。東京都豊島区、北海道夕張市などの例が挙げられています。しかし、豊島区の例は警備会社での就業の様子で「日払い・宿・食事つき」で警備の仕事をしている人たちの話。沖縄などから東京へ職探しに来たが、簡単には見つからない。野宿や漫画喫茶などで寝るようになって、やっとこの仕事に就く。宿と言っても、4人、6人が1部屋に。とりあえず止まり木のつもりだったが、そのままずっと。身元不明で事故死もあり、次のステップへ、どころか、そのまま居続けてしまう。

 夕張市、ピーク時には11万人の人口が現在9千人。さらに30年後には4千5百人を想定している、これには驚いた。具体的には、膨らみ過ぎた市営住宅を維持できないので、閉鎖の方向だ。雨漏りも修理もしないので、住民は転居せざるを得ないが、それもできないで、じっと我慢している例も。税や国保、介護保険などが上がり、小学校中学校が市内で1校ずつになってしまう。沈みゆく船からは乗員(市民)だけでなく、乗組員(市職員)も降りていく。その船に乗り込んだ、東京都職員から夕張市長になった30代の若者の健闘が悲し過ぎる。市長月給15万8千円。だが、具体的に市民の生活のルポが出て来ない。

 島根県の例は、10世帯前後の集落がどのように無人化して無くなったかの例がある。80か所以上の集落の今後が悲観的だ。集落への公共交通を住民に委託されて引き受けた例がある。地域の運営を地域組織に丸投げした例もあるが、成果が出たとは言い難い。Uターン、Iターンなどの新住民の数では人口減はカバーしきれないと理解する人も増えてきた。それで、最初から新住民を当てにしないで、現住民を大切にするのを優先した集落もあり、住居の集約化(一か所に集中的に住居や田畑が集まること)が集落の住民組織で検討されている。このほか、行政の「下請け」業務を住民組織が引き受けた例がある。行政でも一筋縄では行かない作業を末端の住民組織が引き受け引き継ぐことができるのか。できようができまいが、それしか無いとの文章トーンだ。

 まぁ、こういう人口減の先進例なのだが、まだ結果が出ているとまでは言えない、途中経過の過渡期なのだろうから、これ以上を望むべきではない。

 結局、日本全国どこへ居ようと、人口減は起こる。個々人の立場・居住地区によって、その影響は変化するので、万人への処方箋は無いだろう。早い時期ならば、自分で近い未来を選択打開できるだろうと思うが、まだ着手できていない人たちが大半なのも無理はないかもしれない。だが、そろそろ3050年後も視野に入れた将来設計があってもよいのではないだろうか。

 

  要するに、地方自治体の役所目線のルポというしかない。日本各地での様々な立場や年代の人々に人口減がどのように影を落とそうとしているのか、のルポにはなっていないように思う。先の豊島区での警備員の仕事と、来春卒業大学生の高い就職率内定77%はどんな関係になるのか、わたしには説明できない。なんとなく将来を楽観しているようだが、今後50年はこれまでと同じでは済まない未来である。(続きがあるかも)


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